数年前からやっている〈マルクス入門読書会〉で隅田聡一郎『国家に抗するマルクス:「政治の他律性」について』(堀之内出版, 2023)を読み終えたので、その記録を残す。この読書会は、日本中世史を研究している友人とふたりで行っている会で、マルクス主義…
危険 UNSAFE この建築物に立ち入ることは危険です。立ち入る場合は専門家に相談し、応急措置を行った後にしてください。 ——被災家屋に貼られた応急危険度判定の赤い用紙 2024年3月9日–10日に金沢市内のしいのき迎賓館にて日本ライプニッツ協会第9回春季大会…
冬と春の間、少し風が強まるこの季節に梅見に行くことが、最近10年くらいかけて習慣になってきている。梅林に近づくと、春を待ち望む気分と、まだ肌寒い気温の間に滑り込むようにして梅の香りが漂ってくる。鮮やかな黄緑色のメジロが梅の花の蜜を啜っている…
蒸し暑い夜にバーでのんびりしていたら、後から入ってきた知った顔の女性が「ウチで漬けたやつ」と言いながらタッパー容器に入ったぬか漬けをバーテンダーさんに手渡していた。カウンターだけのこじんまりとしたバーで、その場のほとんどが(端の若い男女以…
以前から、Excel を用いて文献を管理する方法について考えている。この基本的な方針については、以前の記事で書いているので、興味があれば読んでみて欲しい。 人文系大学院生による文献管理の一例 今回の記事では〈Excelで文献を管理したい場合には〉役に立…
書籍:イーゴリ・エヴラームピエフ『ロシア哲学史:〈絶対者〉と〈人格の生〉の相克』下里俊行・坂庭淳史・渡辺圭・小俣智史・齋須直人訳(水声社, 2022)。本の詳しい情報については水声社さんのサイトで確認できる。 時期:2022年10月27日から隔週で開催(…
この記事は、2020年5月から続けているホワイトヘッド『過程と実在』読書会の記録である。テクストは基本的に Process and Reality: Corrected edition, Ed. David Ray Griffin and Donald W. Sherburne, The Free Press, 1979 を使用し、適宜『過程と実在』…
Tomoko Hojo / fall asleep を聴きながら。 昇っているのか落ちていくのか、どちらにせよ浮かんでいる感覚がある。 風の音がする。全身が風の圧力を感じている。地面を踏みしめる音がする。私は彷徨うように歩いている。 遠くから何かの鳴き声がする。生き物…
2018年1月30日のツイートを見返していたら——記憶にはないのだけど——私はクラーゲスの『リズムの本質』を読んでいたようで、次の一節を引用していた。 人間あるいは人間の精神がはじめて形のない塊から直観像の世界をでっちあげるのだ、と人間に教えこんだの…
2021年7月2日から10月2日にかけて全9回でおこなった米虫正巳『自然の哲学史』(講談社選書メチエ)読書会のメモです。特に後半の、現代においていかなる自然哲学が可能なのか、という問いのもとに紹介されるシモンドンとドゥルーズの哲学は勉強になった。 プ…
全体に関する感想 2020年8月29日に開催された「精神医療と社会学」読書会*1に参加して『統治の抗争史』を読む機会を得た。 約500頁に渡って詳細な議論が繰り広げられる本書を一人で読む自信はなかったので、他の参加者の方々と読むことができたのは幸いであ…
全体に関して 本書はもともと放送大学の教科書として書かれたものであり、教科書としての初版は1985年、その後1992年に改訂版が公刊されている。著者の山本信は『ライプニッツ哲学研究』(東京大学出版会, 1953) という名著を二十代のうちに執筆し、その後…
ライプニッツは『モナドロジー』§ 33 *1において、「思考〔推論〕の真理」と「事実の真理」という二種類の真理を提示している。「シーザーがルビコン河を渡った」および「ルビコン河を渡らなかった」という命題は、現に存在するシーザーに関して言われるよう…
酒井健太朗『アリストテレスの知識論:『分析論後書』の統一的解釈の試み』(九州大学出版会, 2020)の各章に対する私のメモと、全体に関する簡単な感想をまとめておく。本書は博士論文(2018)がもとになっているということもあり、新しくて野心的でありな…
野矢茂樹『心という難問:空間・身体・意味』(講談社, 2016)を読み終わったので、簡単な感想と読書メモをまとめておく。厚い本だと思って読み始めたが、具体例が多く、サクサクと読み進めることができた。だいぶ昔に読んだ同著者の『哲学の謎』(講談社学…
2018年1月3日から1月13日にかけて、 E・J・エイトン, 渡辺正雄・原純夫・佐柳文男訳『ライプニッツの普遍計画』(工作舎, 1990)を読みながらとったメモ(ツイート)が残っていたのでまとめて公開する。昨年出版されたヒロ・ヒライ監修『ルネサンス・バロッ…
2023/05/15追記:本記事ではExcelで文献を管理する方法を紹介している。だがそもそも、世の中には多くの文献管理ソフトが存在し、そうしたもののなかには簡単な設定のみで利用可能なものもある。そうしたツールにも目を向けてほしい。いちどExcelで文献管理…
全体に関する感想 感染症という現象が持つ意味を、過去・現在・未来の時間的に、そして生物学的事実を超え分野横断的に、幅広い視野から描き出した著作であった。現在の状況は、自らのリスクマネジメントに関して、あるいはさらに、どの程度のリスクマネジメ…
津野仁・内山敏行「武器・防具・馬具」 戦闘のなかで使われる道具にどのように金属がもたらされたかが仔細に示されている。地方に対して中央が金銅製品を配布することで支配・被支配関係を構築していたなど、興味深く思う。 田中謙「木工具」 ヤリガンナは、…
全体に関して 精神医学、心理学、心の哲学という三つの分野を横断的にまとめあげた論文集。それぞれの論文が紹介するトピックは非常に勉強になる内容であった。ただし、それらが相互にどのように関係しているのかは明瞭ではなかったように思う。逆に言えば個…
国際郵便がうまく動いていない状態なので、香港の会社から購入した商品がFedExで届きました。具体的な配送状況はネット上にいくらあっても無駄ではないと思いますので、こちらに記録を残しておきます。香港から一度台湾に行って、また広州の方に戻って行った…
ノートをとるのに紙とシャープペンを使わなくなって3年目になる。以前は罫線にドットの入ったコクヨのノートを使用していたが、iPad Pro を購入して以来、止むを得ない場合を除いて(事務書類などの場合を除ねばならない)あらゆる筆記活動をデジタル化して…
開催中・開催予定も含めて私が主宰する読書会の案内です。適宜更新されます。参加希望の方は、以下のリンク(三浦のresearchmap)の「連絡先」にあるE-mailアドレスまでお願いします。 researchmap.jp [開催中・募集終了] 米虫正己『自然の哲学史』読書会 哲…
以前、当ブログの「ライプニッツ『形而上学叙説』研究会」の成果と訳」の中で公開していたテクスト情報が少し古くなっていたので、情報を追加・修正して以下に公開します。主に『形而上学叙説』を中心とした情報になっていますが、ライプニッツに興味ある方…
『禁じられた遊び』との出会い ルネ・クレマン監督『禁じられた遊び』(1952)に関係する何事かについて、私が得た最初の知識は、何よりもまずその音楽に関してであった。『禁じられた遊び』の劇中の音楽は、(どうやら予算の関係で)ナルシソ・イエペスのギ…
「現実の春は死んでいる」。そう述べたのは塚本邦雄であった(『詞華美術館』「風信子祭」)。果たして、現代に「春」はまだあるのだろうか。彼は続けて次のように言う。「あるいは死に瀕した醜い春と、造り上げられた密室の春しか、私達は見ることができな…
たまに文房具屋さんなどにいくと、思いもよらない商品に出会うことがある。そのときの心情というのは少し複雑で「あ、これ欲しかったやつだ」という気持ちを抱きながら、そのとき初めて「欲しかったやつ」の観念が像を結ぶ。 欲しいものの像をどれほどはっき…
私の父がよく言っていた言葉がある「彷徨う野良猫がいつかエサにありつくが如く」。ブラブラしていると様々な事物に出会う。「犬も歩けば棒にあたる」という諺が、意味の良し悪しの別なく使われるように、出会われた様々な事物は、美味しいエサばかりとは限…
瞬く間にすぎてゆく年月を数えることに精一杯で、その中身をすっかり忘れてしまうなんてことにならないように、たまにはこうやって記録を残しておくのも大切なことであろう。
日本ライプニッツ協会第10回大会 2018年11月10日から11日にかけて、石川県金沢市にある石川四高記念文化交流館にて日本ライプニッツ協会第10回大会が開催されました。ちょうど紅葉が美しい季節であり、会場前にある公園でも木々がそれぞれの色に染まっていて…