わたくしごと註解

17-18世紀の西洋哲学および生命思想史を研究しています。執筆者については「このブログについて」をご覧ください。

読書

【読書会】隅田聡一郎『国家に抗するマルクス:「政治の他律性」について』に関する覚書

数年前からやっている〈マルクス入門読書会〉で隅田聡一郎『国家に抗するマルクス:「政治の他律性」について』(堀之内出版, 2023)を読み終えたので、その記録を残す。この読書会は、日本中世史を研究している友人とふたりで行っている会で、マルクス主義…

エヴラームピエフ『ロシア哲学史』(水声社)読書会の記録(最終更新:2024/01/15)

書籍:イーゴリ・エヴラームピエフ『ロシア哲学史:〈絶対者〉と〈人格の生〉の相克』下里俊行・坂庭淳史・渡辺圭・小俣智史・齋須直人訳(水声社, 2022)。本の詳しい情報については水声社さんのサイトで確認できる。 時期:2022年10月27日から隔週で開催(…

【随時更新】ホワイトヘッド『過程と実在』読書会の記録(最終更新:2024/01/13)

この記事は、2020年5月から続けているホワイトヘッド『過程と実在』読書会の記録である。テクストは基本的に Process and Reality: Corrected edition, Ed. David Ray Griffin and Donald W. Sherburne, The Free Press, 1979 を使用し、適宜『過程と実在』…

米虫正巳『自然の哲学史』読書会の記録

2021年7月2日から10月2日にかけて全9回でおこなった米虫正巳『自然の哲学史』(講談社選書メチエ)読書会のメモです。特に後半の、現代においていかなる自然哲学が可能なのか、という問いのもとに紹介されるシモンドンとドゥルーズの哲学は勉強になった。 プ…

【読後感想文】重田園江『統治の抗争史:フーコー講義 1978–79』勁草書房, 2018.

全体に関する感想 2020年8月29日に開催された「精神医療と社会学」読書会*1に参加して『統治の抗争史』を読む機会を得た。 約500頁に渡って詳細な議論が繰り広げられる本書を一人で読む自信はなかったので、他の参加者の方々と読むことができたのは幸いであ…

【読後感想文】山本信『哲学の基礎』北樹出版, 1988.

全体に関して 本書はもともと放送大学の教科書として書かれたものであり、教科書としての初版は1985年、その後1992年に改訂版が公刊されている。著者の山本信は『ライプニッツ哲学研究』(東京大学出版会, 1953) という名著を二十代のうちに執筆し、その後…

【読書感想文】酒井健太朗『アリストテレスの知識論:『分析論後書』の統一的解釈の試み』九州大学出版会, 2020.

酒井健太朗『アリストテレスの知識論:『分析論後書』の統一的解釈の試み』(九州大学出版会, 2020)の各章に対する私のメモと、全体に関する簡単な感想をまとめておく。本書は博士論文(2018)がもとになっているということもあり、新しくて野心的でありな…

【読書感想文】野矢茂樹『心という難問:空間・身体・意味』講談社, 2016.

野矢茂樹『心という難問:空間・身体・意味』(講談社, 2016)を読み終わったので、簡単な感想と読書メモをまとめておく。厚い本だと思って読み始めたが、具体例が多く、サクサクと読み進めることができた。だいぶ昔に読んだ同著者の『哲学の謎』(講談社学…

ライプニッツの伝記的文献紹介と E・J・エイトン『ライプニッツの普遍計画』の読書メモ

2018年1月3日から1月13日にかけて、 E・J・エイトン, 渡辺正雄・原純夫・佐柳文男訳『ライプニッツの普遍計画』(工作舎, 1990)を読みながらとったメモ(ツイート)が残っていたのでまとめて公開する。昨年出版されたヒロ・ヒライ監修『ルネサンス・バロッ…

【読後感想文】美馬達哉『感染症社会:アフターコロナの生政治』人文書院, 2020

全体に関する感想 感染症という現象が持つ意味を、過去・現在・未来の時間的に、そして生物学的事実を超え分野横断的に、幅広い視野から描き出した著作であった。現在の状況は、自らのリスクマネジメントに関して、あるいはさらに、どの程度のリスクマネジメ…

【読書メモ】榊原英輔・田所重紀・東畑開人・鈴木貴之編『心の臨床を哲学する』新曜社, 2020

全体に関して 精神医学、心理学、心の哲学という三つの分野を横断的にまとめあげた論文集。それぞれの論文が紹介するトピックは非常に勉強になる内容であった。ただし、それらが相互にどのように関係しているのかは明瞭ではなかったように思う。逆に言えば個…

【読書メモ】村上恭通(編)『モノと技術の古代史 金属編』吉川弘文館, 2017

津野仁・内山敏行「武器・防具・馬具」 戦闘のなかで使われる道具にどのように金属がもたらされたかが仔細に示されている。地方に対して中央が金銅製品を配布することで支配・被支配関係を構築していたなど、興味深く思う。 田中謙「木工具」 ヤリガンナは、…

読書メモのリンク集

ジャン・グロンダン/末松壽・佐藤正年訳『解釈学』白水社文庫クセジュ, 2018.ジャン・グロンダン『解釈学』 上村忠男『ヴィーコ論集成』みすず書房、2017.上村忠男『ヴィーコ論集成』 戸谷洋志『ハンス・ヨナスを読む』堀内出版, 2018.戸谷洋志『ハンス・ヨ…

ヴィトルト・リプチンスキ/春日井晶子訳『ねじとねじ回し』(早川書房)に関する覚書

20世紀の終わりごろ、それまでの1000年間で最も偉大な道具がなんであったのかを調査した建築学者のエッセイである。ハンマーも、のこぎりも、古代ギリシアからずっと改良を重ねながら使われ続けてきたものだった。しかし、「ねじ」と「ねじ回し」はそうでは…

M. ヘッセ『科学・モデル・アナロジー』:アナロジーの種類

昨日も書いた、M. ヘッセ『科学・モデル・アナロジー』の「実質的アナロジー」の章において、いくつかのアナロジーの型が紹介されている。アナロジーと一口に言っても、はっきりと定義されているのではないがゆえに、様々な型が存在している。今回はそれを書…

M. ヘッセ『科学・モデル・アナロジー』:観測不可能への歩み

科学の理論というものが, 経験的なデータに「説明」を与えるためのものであるならば, その理論を何らかのモデルを用いて理解する必要があるだろうか. あるいは, その理論を馴染みの対象や出来事とのアナロジーによって理解する必要があるだろうか. これは、M…

タイムトラベルな文章

なお、このあと、提喩の定義についてはいくらか込みいった検討に立ち入ることとなるので、わずらわしい定義問題などに関心のない向きは、ここから一五六ページまで飛ばして読んでくださってもさしつかえはない。

坂本賢三『機械の現象学』:「機械」とは何か、そして近代の知識とは何か。

科学の方が機械をモデルにしてつくり出されたといってよく、機械は科学的方法の根拠であるといってもよいのである。したがって、自然的見方の出発点である機械が哲学的分析から離れたところにあり、哲学的考察をいわば拒否しているかのごとき姿をとっている…

高橋澪子『心の科学史』の序説に関する覚書

心理学が一実験科学ないし個別科学として制度的に確立されるのは、周知の通り、いまから一世紀あまり前のことである。しかし、厳密な意味における近代科学としての実験心理学の論理が成立するためには、さらに半世紀近くを経て、一九三〇年代末に完成する「…

形式と発見法-『思考のための文章読本』に関して

花村太郎『思考のための文章読本』(ちくま学芸文庫)というのを最近読んだので忘れないうちに感想を書いておこうと思う。 思考のための文章読本 (ちくま学芸文庫) 作者: 花村太郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/09/07 メディア: 文庫 この商品を…