2019-01-01から1年間の記事一覧
『禁じられた遊び』との出会い ルネ・クレマン監督『禁じられた遊び』(1952)に関係する何事かについて、私が得た最初の知識は、何よりもまずその音楽に関してであった。『禁じられた遊び』の劇中の音楽は、(どうやら予算の関係で)ナルシソ・イエペスのギ…
「現実の春は死んでいる」。そう述べたのは塚本邦雄であった(『詞華美術館』「風信子祭」)。果たして、現代に「春」はまだあるのだろうか。彼は続けて次のように言う。「あるいは死に瀕した醜い春と、造り上げられた密室の春しか、私達は見ることができな…
たまに文房具屋さんなどにいくと、思いもよらない商品に出会うことがある。そのときの心情というのは少し複雑で「あ、これ欲しかったやつだ」という気持ちを抱きながら、そのとき初めて「欲しかったやつ」の観念が像を結ぶ。 欲しいものの像をどれほどはっき…
私の父がよく言っていた言葉がある「彷徨う野良猫がいつかエサにありつくが如く」。ブラブラしていると様々な事物に出会う。「犬も歩けば棒にあたる」という諺が、意味の良し悪しの別なく使われるように、出会われた様々な事物は、美味しいエサばかりとは限…