職人たちがものを作る際の作業工程を紹介する番組をみた。日本の刀鍛冶が鉄を叩いて鍛えるシーンにハマって YouTube でそのような動画を漁ったこともある。ある時、次のような疑問が浮かんできた「作業工程って作品の一部なのだろうか?」 。 パフォーミング…
全体に関する感想 2020年8月29日に開催された「精神医療と社会学」読書会*1に参加して『統治の抗争史』を読む機会を得た。 約500頁に渡って詳細な議論が繰り広げられる本書を一人で読む自信はなかったので、他の参加者の方々と読むことができたのは幸いであ…
投げ捨てられたアイスの棒にはいつの間に無数の小さな蟻が群がっていた。まだ昼間の暑さを忘れられないアスファルトの上で、食べ残したアイスは溶け出した。夕日に照らされて少し輝いている。 このアイスの棒はなぜ捨てられたのだろうか。単にベタベタするか…
全体に関して 本書はもともと放送大学の教科書として書かれたものであり、教科書としての初版は1985年、その後1992年に改訂版が公刊されている。著者の山本信は『ライプニッツ哲学研究』(東京大学出版会, 1953) という名著を二十代のうちに執筆し、その後…
ライプニッツは『モナドロジー』§ 33 *1において、「思考〔推論〕の真理」と「事実の真理」という二種類の真理を提示している。「シーザーがルビコン河を渡った」および「ルビコン河を渡らなかった」という命題は、現に存在するシーザーに関して言われるよう…
酒井健太朗『アリストテレスの知識論:『分析論後書』の統一的解釈の試み』(九州大学出版会, 2020)の各章に対する私のメモと、全体に関する簡単な感想をまとめておく。本書は博士論文(2018)がもとになっているということもあり、新しくて野心的でありな…
野矢茂樹『心という難問:空間・身体・意味』(講談社, 2016)を読み終わったので、簡単な感想と読書メモをまとめておく。厚い本だと思って読み始めたが、具体例が多く、サクサクと読み進めることができた。だいぶ昔に読んだ同著者の『哲学の謎』(講談社学…
2018年1月3日から1月13日にかけて、 E・J・エイトン, 渡辺正雄・原純夫・佐柳文男訳『ライプニッツの普遍計画』(工作舎, 1990)を読みながらとったメモ(ツイート)が残っていたのでまとめて公開する。昨年出版されたヒロ・ヒライ監修『ルネサンス・バロッ…
書籍や論文をどのように管理するのか、この問いは尽きることのない論争を生み出してきた。文献管理ツールも様々にあり、どれを使えばいいのか迷う。私自身、大学院に入ったタイミングで、図書館の文献管理セミナーを受講し、いくつかのツールを試してみた。…
全体に関する感想 感染症という現象が持つ意味を、過去・現在・未来の時間的に、そして生物学的事実を超え分野横断的に、幅広い視野から描き出した著作であった。現在の状況は、自らのリスクマネジメントに関して、あるいはさらに、どの程度のリスクマネジメ…
津野仁・内山敏行「武器・防具・馬具」 戦闘のなかで使われる道具にどのように金属がもたらされたかが仔細に示されている。地方に対して中央が金銅製品を配布することで支配・被支配関係を構築していたなど、興味深く思う。 田中謙「木工具」 ヤリガンナは、…
全体に関して 精神医学、心理学、心の哲学という三つの分野を横断的にまとめあげた論文集。それぞれの論文が紹介するトピックは非常に勉強になる内容であった。ただし、それらが相互にどのように関係しているのかは明瞭ではなかったように思う。逆に言えば個…
国際郵便がうまく動いていない状態なので、香港の会社から購入した商品がFedExで届きました。具体的な配送状況はネット上にいくらあっても無駄ではないと思いますので、こちらに記録を残しておきます。香港から一度台湾に行って、また広州の方に戻って行った…
ノートをとるのに紙とシャープペンを使わなくなって3年目になる。以前は罫線にドットの入ったコクヨのノートを使用していたが、iPad Pro を購入して以来、止むを得ない場合を除いて(事務書類などの場合を除ねばならない)あらゆる筆記活動をデジタル化して…
開催中・開催予定も含めて私が主宰する読書会の案内です。適宜更新されます。連絡は三浦(amenbo031129[アットマーク]gmail.com)にお願いします。 [開催中]〈ゲームの哲学〉研究会 ビデオゲームやボードゲームといった遊びに関して、学術的にどのような議論が可能…
以前、当ブログの「ライプニッツ『形而上学叙説』研究会」の成果と訳」の中で公開していたテクスト情報が少し古くなっていたので、情報を追加・修正して以下に公開します。主に『形而上学叙説』を中心とした情報になっていますが、ライプニッツに興味ある方…
『禁じられた遊び』との出会い ルネ・クレマン監督『禁じられた遊び』(1952)に関係する何事かについて、私が得た最初の知識は、何よりもまずその音楽に関してであった。『禁じられた遊び』の劇中の音楽は、(どうやら予算の関係で)ナルシソ・イエペスのギ…
「現実の春は死んでいる」。そう述べたのは塚本邦雄であった(『詞華美術館』「風信子祭」)。果たして、現代に「春」はまだあるのだろうか。彼は続けて次のように言う。「あるいは死に瀕した醜い春と、造り上げられた密室の春しか、私達は見ることができな…
たまに文房具屋さんなどにいくと、思いもよらない商品に出会うことがある。そのときの心情というのは少し複雑で「あ、これ欲しかったやつだ」という気持ちを抱きながら、そのとき初めて「欲しかったやつ」の観念が像を結ぶ。 欲しいものの像をどれほどはっき…
「好きだ」と誰かに伝えると、どんな反応が返ってくるだろうか。小学生の頃は「私も好きだ」か「私は嫌い」という言葉が返ってくるものだと思っていた。中学生になり、もう少し世の中のことがわかるようになると「私は好きでも嫌いでもない」という返事の可…
私の父がよく言っていた言葉がある「彷徨う野良猫がいつかエサにありつくが如く」。ブラブラしていると様々な事物に出会う。「犬も歩けば棒にあたる」という諺が、意味の良し悪しの別なく使われるように、出会われた様々な事物は、美味しいエサばかりとは限…
瞬く間にすぎてゆく年月を数えることに精一杯で、その中身をすっかり忘れてしまうなんてことにならないように、たまにはこうやって記録を残しておくのも大切なことであろう。
日本ライプニッツ協会第10回大会 2018年11月10日から11日にかけて、石川県金沢市にある石川四高記念文化交流館にて日本ライプニッツ協会第10回大会が開催されました。ちょうど紅葉が美しい季節であり、会場前にある公園でも木々がそれぞれの色に染まっていて…
朝。 寝坊をするとき、私はたいてい夢をみている。「あれ、夢をみてる場合だっただろうか」と夢中で自問し、重い瞼をこじ開けて時計をみると、予定時刻はとうに過ぎ去ってしまっているのだ。今日もそんな仕方で1日が始まった。 友人たちと本郷でやっている…
小学生の頃、下校途中に追いかけっこをしていて転んだことがある。季節も思い出せないくらい古い記憶だけれども、かすかな記憶をたどると、坂道で転んだ私は、腕を変な方向に曲げてしまいその後数週間のギプス生活を送ったのであった。 成長して転ぶことも少…
はじめに 2017年1月頃から、中期ライプニッツの主要な著作として有名な『形而上学叙説』の研究会をオンライン(現在は google ハングアウト)で行っている。基本的には、ライプニッツを専門としない人や、さらには哲学を専門としない人に向けた会として行っ…
さいきん読書会に関する話題をよく目にする。それらの議論に一石を投じようなどという気持ちは毛頭ないのだが、私も読書会にお世話になっている一人の人間として少し考えてみようという気になった。 議論へコミットする気がなくても、思惟はつねに状況から影…
「牛に引かれて善光寺参り」という仏教説話があります。牛を追いかけていったら善光寺に辿り着いちゃったというお話でありまして、それもまた仏さまのお導きということになっております。はてさて、仏さまに導かれてなのかどうかはともかく、多くの人々が昔…
ジャン・グロンダン/末松壽・佐藤正年訳『解釈学』白水社文庫クセジュ, 2018.ジャン・グロンダン『解釈学』 上村忠男『ヴィーコ論集成』みすず書房、2017.上村忠男『ヴィーコ論集成』 戸谷洋志『ハンス・ヨナスを読む』堀内出版, 2018.戸谷洋志『ハンス・ヨ…
確認してみるとどうやら前回ブログを更新してから、すでに100日以上が経過していました。こまめに何か書いておけば、まとめて振り返ることもないのかもしれませんが、忘れないうちに今年あったことを書き留めておこうという気になりました。というのも、大掃…