Tomoko Hojo / fall asleep を聴きながら。
昇っているのか落ちていくのか、どちらにせよ浮かんでいる感覚がある。
風の音がする。全身が風の圧力を感じている。地面を踏みしめる音がする。私は彷徨うように歩いている。
遠くから何かの鳴き声がする。生き物であるとすれば少し奇妙だけれども。導かれるように水辺へと入り込んでいく。身体は水へ、魂は観念の方へと引き寄せられていく。
目を閉じてみる。私は水中にいる、同時に森の中にいる。全ての中にいる。
感覚を開いていく。身体を超えて向こう側を眺めてみる。これは想像力ではない、現実に何か飛び越えてゆくことである。言葉は形を持たずに、音は朧げに響き、水が全てを包み込む。
液体に包まれているのではない、私自身が液体なのだ。目を閉じて自分のうちに沈み込んでいくとき、海を感じる。境界の曖昧さを恐れてはならない。さまざまな時間と国と存在とすべてをひとつとする水のうちで、鼻歌を唱えてみよ。怖くはない。
そしてゆっくりと溶け込んでいく。
神妙な緊張感。溺れているのではない。もしそうなら、もっと苦しいはずだから。私はただただ沈み込んでいく。
私の口も喉もすべてが液体になり、最後には言葉も液体のように世界へと溶け込んでいってしまう。
規則的な音がする。規則的な音を聞きながら世界のことを思い出す。