わたくしごと註解

17-18世紀の西洋哲学および生命思想史を研究しています。執筆者については「このブログについて」をご覧ください。

2016-01-01から1年間の記事一覧

夜とインク

ブルーブラックのインクだから青でも黒でもない。 夜の空を見てみても、昼の青でも真っ黒でもない。 ペン先で吸い上げたインクを拭き取る紙に浸みこむ夜の空。 インクをこぼした紙に穴を開けて光を透かしてみたらよい。 それは夜だろうか。それともインクだ…

宇宙は一匹の生き物だという考え方

宇宙はひとつの生き物で、一つの物質と一つの魂を備えたものである、ということに絶えず思いをひそめよ。またいかにすべてが宇宙のただ一つ感性に帰するのか、いかに宇宙がすべてをただ一つの衝動から行うか、いかにすべてがすべて生起することの共通の原因…

効率的な仕事と手数の少なさ

私はパン屋さんでパンを作るという、極めておしゃれなバイトをしている。お花屋さん、ケーキ屋さん、カフェ屋さん、辺りに並ぶ「なんかいいなぁ」系バイトのうちの1つであろうと思う。ところが、パン屋さんの場合、早朝がけっこう忙しい。開店前に品物を揃え…

五百羅漢と顔

散歩日和だったので、川越の喜多院にある五百羅漢を見に行ってきた。以前に一度行ったことがあったのだけれど、500体以上もある石造をひとつひとつ眺めて歩くのはいつでも楽しいことだと思う。 喜多院の歴史は、奈良時代にまでさかのぼるともいわれ、少なく…

駅に向かう道を夕方に歩く

夕方に出かけるのはとても良い。 夕方は一日の終わりだという気持ちと、これからあの場所へ行くのだという気持ちとが一緒になる。 夕方は自然の境目、つまり昼と夜の。 夕方は心の境目、つまり始めと終りの。 夕方に出かけるという心地よさは、背徳感から生…

現象の善き基礎

コピーやイコンが善きイマージュであり、善き基礎のあるイマージュであるのは、類似性を授けられているからである。ただし、この類似性は、外的な関係と解されてはならない。類似性は、事物と事物の関係であるよりは、事物からイデアへの関係なのである。 (…

冬のイメージは電車

私にとって、冬の主要なイメージの一つとして「電車」というのがある。冬の電車はとても印象的なのだ。冬の電車は温まり過ぎた足元のヒーターと、ぬるい空気、そしてまっ白く曇った窓ガラス…それに年末だと、みんなのソワソワした空気も一緒にどこかへ走って…

絵を描く人がいると絵ができる

ここ15年くらいの話だけれど、絵というものが常につきまとってきた。というよりも、私自身が絵につきまとっていたのかもしれないが。そして、「描かれた絵」につきまとっていたのではなくて、「絵を描く人」につきまとっていたのかもしれないが。 初恋の人(…

私がものを見るということは、私の空虚を埋めるのだろうか

何かを論じたり、評したりすること、さらには単に何かを語ろうとすることは常に、その対象を自分の外部に置くことを伴う。言葉にするだけでなく、考えることそれ自体も何か私ではないものを考える。私自身を考える際も私は対象化される。リンド夫妻が『ミド…

犬の思い出

雨の日の散歩は一緒に濡れながら歩いた 雪の日は庭で雪玉を投げて遊んだりした 山に登って一緒に頂上でお弁当を食べた 川で一緒に泳いで君は流されかけていた 海に行ったときも君は引いては寄せる波に驚いていた 小さいときはよく喧嘩をした でもそのあと同…

恋がわからなくても愛着はわかる

「恋がわからない」「好きという気持ちがわからない」 そう言ってくれる人にたまに出会う。もどかしいような、わかってほしいような気持ちになる。だけれども、それよりもまず嬉しいと思う。それは、とても真面目だし真剣に考えてくれていることから出る言葉…

どうしたら名人になれるのか

古今亭志ん朝の落語のマクラに「名人」について述べているものがある。最近は名人ということがよく言われるけれど、本当の名人はいるのだろうか。名人たるには何が必要なのか。そういうことをはなしている。カトリックで聖人に認定されるためには、いくらか…

意識とモナドに関する覚書Ⅱ

ライプニッツの『認識、心理、観念についての省察 Meditationes de Cognitione, Veritate et Ideis. 1984』(GP IV, 422–426)という著作は、認識が曖昧であるとか判明であるとかについて定義付けを行っていることで有名である。 簡単に整理すると、まず認識…

信念は生命以上に大切なものとなりうるだろうか。

Toute opinion peut-être préférable à la vie, dont l'amour parît si fort et si naturel. どんな信念でも生命以上に大切なものとなりうる。生命への愛着ほど強く自然なものはないように見えるのに。(パスカル『パンセ』29、岩波文庫、塩川訳) 『パンセ…

本に線をどのように引くのか

本に線を引くという行為に賛否両論あることは、いちおう知っている。その行為が効果的であるかとか、人の道に反するとか、そういう議論はとりあえず置いておきたい。ここで書きたいのは、「線を引くことにしよう」と決めたあとの話である。しかも、「どこに…

平成28年1月29日に見た夢の話

不思議な夢を見たときはメモを残すことがある。平成28年1月29日の私もどうやら不思議な夢をみたらしく、午前4時10分に短いメモを残していた。少し言葉を付け足しながら、写し取ってみることにする。 私は電車に乗っていた。西武池袋線池袋行き急行電車。その…

選択肢をいつの間にか忘れてしまっていること

今日は三田に行ったり本郷に行ったりしたので、多くの出来事に遭遇した。外は刺激が多いとつくづく思う。自転車に乗るともうだいぶ寒くなったし、お昼に食べた富士そばの「旨辛肉そば」はすごく辛くて困ったし(辛いものはあまり食べられない)、『ライプニ…

過去の自分から私へ「ストレスを感じないために」

私はツイッターとは別に、Evernote手帳というアプリを使っている。これが非常によくて、このアプリ自体はただ打ち込んで送信する機能しかない。しかし、これをEvernoteに連携させると1日ごと区切ってメモを作成してくれる(下みたいな感じ)。 これだと過去…

形式と発見法-『思考のための文章読本』に関して

花村太郎『思考のための文章読本』(ちくま学芸文庫)というのを最近読んだので忘れないうちに感想を書いておこうと思う。 思考のための文章読本 (ちくま学芸文庫) 作者: 花村太郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/09/07 メディア: 文庫 この商品を…

ニキビと因果

先月、とある演劇を見に行った。「怪談」という題名がつけられたその演劇は、真景累ヶ淵、牡丹灯篭、そして番町皿屋敷を原案に、ある落語家が物語の世界にひきづりこまれていくという不思議な物語であった。いくつも印象的な演出があったが、その中の一つに…

意識とモナドに関する覚書

昨日、研究室の先輩に頂いた質問についてしばらく考えていた。その質問は、私が理解した限りでは「意識とモナド(の表象)は区別されるのか」ということである。その場では変な答えをしてしまったように思うし、実はとても重要な問題をはらんでいるような気…

どうしようもなく魅力的な人間がいるということについて

今日はとあるシンポジウムの手伝いとして1日外出していた。不思議な人々の集まるシンポジウムで音楽や物理をしている教授が主宰で、経済学の教授や仮想通貨の倫理をやっている他国の教授などが集まってそれぞれが講演をしていくという。私はとある縁でそうい…

知性は止まることができない

ベーコン(ロジャーじゃない方で、画家じゃない方)と聞くと、カリカリの美味しいベーコンを思い浮かべてしまう。だから僕はベーコンの研究している人は、一体どうしているのだろうかと疑問に思っている。いつかそういう人に会う事があれば是非聞いてみたい…

恋とキェルケゴール

先日、寝る前に読もうと思い図書館で借りてきた本がある。 キェルケゴールの日記 哲学と信仰のあいだ 作者: セーレン・キェルケゴール,鈴木祐丞 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/04/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る キェルケゴ…

nowhere

nowhere という英語をみたとき、いつも now–here を思い浮かべてしまう。それは、tamen というラテン語を見たとき、「他面」と思ってしまうのと同じようにである。nowhere と now–here は英語に疎い私にもなんとなく全然違うことを言っているように思われる…

今日はこれを聴いて泣きました

www.youtube.com 今日はこれを聴いて少しだけ泣きました。ありがとうございます。 何も言うことはありませんが、聴いてみたらいいと思います。

風邪をひきやすいあなたのことを思い出します

今日はものすごく暑いですね。蒸し暑い。この季節になると、いつもならゆずの「いつか」を大声で歌って体を温めているのですが、どうにもこう暑いと動きたくありません。「少しずつ街の風も冷たくなってきたから 風邪をひきやすいあなたのことが気になります…

夏目漱石とキタドコ

夏目漱石の小説をときどき読む。最近は未だ読んだことのなかった『吾輩は猫である』をKindleに導入して、ちょっとした時間に読み進めている。今、ここに書こうとしているのは、その読書におけるちょっとした出会いのお話である。 『吾輩は猫である』という小…

雨と蜘蛛の巣

今朝起きると、小雨がサァーと音を立てて草木を濡らしていた。私は窓越しにそれを眺めつつ、「あぁ、今日はキタドコで髪を切る日だ」と外出の憂鬱のみを頭に思い浮かべた。いつでもそうなのだが、雨の日に外出しなければならないときは憂鬱で仕方ない。昔か…

毎日とは言わないけれど

毎日とは言わないけれど 思い出して欲しい僕のなにかを 週一回でもいい 週一回なんて贅沢だと 思われるかもしれないそれはごもっとも 月一回だっていい 月一回なら年に一回でも 変わらないじゃないとあなたは言うかもしれないそのとおり 年に一回だけでもい…