わたくしごと註解

17-18世紀の西洋哲学および生命思想史を研究しています。執筆者については「このブログについて」をご覧ください。

ライプニッツ『モナドロジー』の一般向け講義のご案内(2024年6月2日〜)

大学でも行っている、17世紀の哲学者として有名なライプニッツに関する講義を、初学者の方を含む一般の方々向け講義として、より時間をかけて、より詳細な内容で開講いたします。今回みなさんと一緒に読み進めるメインテクストは、ライプニッツ哲学のエッセンスが詰まった『モナドジー』という著作です。以下では、講義の詳しい内容を紹介しています。みなさんのご参加をお待ちしています。

開催概要

サービス名:The Five Books

期間:2024年6月2日(日) ~ 2024年7月7日(日)
毎週日曜日20時よりオンラインで開催(録画での参加も歓迎します)
随時Slackを用いて、質問等の講師とのやりとりが可能です。

※6月23日はお休みで、一週空きます。予習や復習に役立ててください。

料金:10,000円(2,000円/講義×5回)

お申し込みはこちら

講義概要

1646年、三十年戦争の最中、ドイツ・ザクセン地方の中心地ライプツィヒで、一人の天才哲学者が彗星の如く誕生しました。彼こそ、のちに微分法を打ち立て、計算機の先駆と評される二進法の重要性に着目し、ヴェルフェン家史を調査・執筆し、ハルツ鉱山計画に参加して独自のポンプを考案し、教会再合同のためにカトリックプロテスタントの間を奔走し、さまざまな政治家や学者たちと交流し、そしてそれまで誰一人辿り着かなかった「モナドジー」と呼ばれることとなる哲学に至った人物、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツそのひとです。その哲学は現代もまだその新しさを失っておらず、多くの思想家や文筆家、芸術家、他の分野の学者たちにも参照され続けています(例えば最近だと「アクターネットワーク理論」という社会学理論を提唱したブリュノ・ラトゥールへの影響などが知られています)。

今回の講義では、ライプニッツ哲学の全体像を眺望できる著作『モナドジー』を中心的に扱います。ですが、それだけではありません。現在、岩波文庫で手に入る版には関連著作が多数収録されており『モナドジー』を読む上ではとても有益です。そこで、この講義では他の著作にも目を配りつつ『モナドジー』を読み進めていくという方針をとります

モナドジー』は全部で90の短い節から構成されています。その凝縮された内容を読み解く上で、岩波文庫に一緒に収録されている『理性に基づく自然と恩寵の原理』や「ゾフィーシャルロッテ宛書簡」などの論文や手紙は、ときにわかりやすい言葉で説明してくれていたり、ときに内容を詳細に語ってくれていたりと、皆さんの読解を大いに助けてくれることでしょう。

本格的かつ壮大な哲学を全5回の講義で扱うため、ハイレベルな内容も含むことにはなりますが、初めて哲学書を読むという受講者の方々にも配慮しつつ丁寧に進行いたします。また講義外の時間もSlackを通して、みなさまの読書をきっちりサポートいたします。

さあ、ライプニッツが描いた「永遠の哲学(philosophia perennis)」をともに読み解きましょう。みなさんのご参加をお待ちしております。

ライプニッツによる『モナドジー』の手稿とライプニッツが住んでいた家の前の街並み(講師撮影)

 

使用テクスト

今回の講義では2019年に刊行された岩波文庫の『モナドジー』(谷川多佳子・岡部英男訳)に収録された複数の著作を扱います。基本的にはこちらの翻訳書をご用意ください。同じ岩波文庫の以前の版『単子論』(河野与一訳)には収録されていない書簡なども扱います。  

各講義の内容

第1回 (2024年6月2日)の内容:

初回の講義では、ライプニッツの生涯と同時代の哲学についての紹介を行います。また、『モナドジー』から約20年前に書かれた論文「実体の本性と実体間の交渉ならびに魂と身体のあいだにある結合についての新説」(岩波文庫 95-114頁)を簡単に紹介します。モナドジーの前提となっている予定調和説の考え方について学びましょう。

第2回 (2024年6月9日)の内容:

モナドについて」と題して『モナドジー』第1節から第20節と、「理性に基づく自然と恩寵の原理」第1節から第2節、「ダンジクール宛書簡」(岩波文庫 182-185頁)を扱います。さあ実際にライプニッツ自身が書いたものを読んでいきましょう。『モナドジー』を開くと、冒頭からモナドの説明が始まります。ライプニッツ哲学にとって最も基礎的でありながら最も難しい概念であるモナド、この講義ではその重要な特徴をみてゆくことになります。

第3回 (2024年6月16日)の内容:

「魂と真理について」と題して『モナドジー』第21節から第37節、「理性に基づく自然と恩寵の原理」第3節から第8節、「コスト宛書簡」(岩波文庫 163–171頁)を扱います。モナドが単なる事物の基礎というよりもむしろ意識の源としてのものであることが少しずつ明らかになってゆきます。さらに、そうした意識の働きのうちで知識や真理といったものがどのように扱われることになるのかということも、ここで確認しておきましょう。

6月23日はお休み

第4回 (2024年6月30日)の内容:

「神と最善世界について」と題して『モナドジー』第38節から第60節、「理性に基づく自然と恩寵の原理」第9節から第13節を扱います。私たちに身近な事物や自分たち自身の心理学的働きの記述から出発した本書は、ついに神や世界全体の記述に移ってゆきます。17世紀哲学の多くがそうであるように、ライプニッツもまた「神」という概念に重要な働きを与えて、この世界の説明原理のうちに組み込んでいきます。

第5回 (2024年7月7日)の内容:

「被造物と神の王国」と題して『モナドジー』第61節から第90節、「理性に基づく自然と恩寵の原理」第14節から第18節、「ゾフィーシャルロッテ宛書簡」(岩波文庫 138–148頁)を扱います。ここから『モナドジー』は単なる「モナド」から離れて、生物の記述へ、そして最終的には道徳的な記述へと移ってゆくことになります。『モナドジー』という著作が単にモナドを説明するためのものではなくて、より大きな視野で書かれたものであることを示唆しています。

講師情報

講師:三浦隼暉(東京大学大学院人文社会系研究科)
成城大学専修大学桜美林大学工学院大学等で非常勤講師もしています。

専門は、17世紀哲学および生命思想史

詳しい業績等は以下をご覧ください。

researchmap.jp

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