蟻がアイスを運んでゆくという事

投げ捨てられたアイスの棒にはいつの間に無数の小さな蟻が群がっていた。まだ昼間の暑さを忘れられないアスファルトの上で、食べ残したアイスは溶け出した。夕日に照らされて少し輝いている。

このアイスの棒はなぜ捨てられたのだろうか。単にベタベタするから、それとも外れてしまったからなのだろうか。両端の丸みは誰も傷つけまいとする優しさだ。やきとりの串とは違う。

この蟻たちはどこから来たのだろうか。蟻の列はどこまでも続いてやがて俺たちの見ることのできない穴の中に消えていく。穴の中で蟻たちは何をしているのだろうか。永遠とアイスを運んでいく黒い列は、まるで誰もいない街で動き続けるベルトコンベアーのようだ。

夕暮れは人間も、虫も、鳥も、みんなにそろそろ1日が終わりだということを教えてくれる。冬は日が短いのでいつの間にか外は真っ暗なのだけれど、この季節の夕方はまだかまだかと待っていてもなかなか空は暗くならない。ただ空気だけが少しずつ夜に近づいていくのを感じることができる。のんびりと暮れる日は1日の終わりに穏やかさを教えてくれるように思う。

アイスの棒に群がったこの小さな蟻たちも、そろそろ巣に戻って休むのだろうか。黒いベルトコンベアーはその時やっと生き物だったことを思い出す。そのあとはただ、蟻たちが全部持って行ってしまったのか、それとも暑さに蒸発していったのかわからないが、綺麗な棒が転がっているのだろう。

そして、アイスの棒は相変わらず優しさを湛えてそこにあり続けてゆく。