わたくしごと註解

17-18世紀の西洋哲学および生命思想史を研究しています。執筆者については「このブログについて」をご覧ください。

また同じ星のもとで

昨夜は『星の王子さま』を読みながら、いつの間にか寝ていた。これを読むと何度でも泣いてしまうので、枕元にはティッシュの箱を用意しなければならない(こういうときのためにも枕元にティッシュの箱は置かれたりするのだ)。

僕は王子さまから何かを教わったかというとそうでもない。目には見えないものが大切なことくらい僕だって知っているのだ(それはもともと王子さまがキツネに教えてもらったことであるのだけれど)。だから、それを読んで「あぁ、そうだよね」くらいの気持ちにしかならない。あぁそうだよね、目に見えないものが一番大切だよね。

でもだ。でも、王子さまも知っていた。王子さまも旅に出て色々な星を回りながら、「大人って変だ」と呟きつづけているじゃないか。王子さまは何が大切なのか、もう知っていたのだ。それでも、バラと共に暮らした星を去った。

そして地球にきて、キツネにそれを教えてもらう。そのときにもう一度知ることになる。いくつものバラよりも、絆を結んだ一輪のバラ。何匹のキツネよりも、なついた一匹のキツネ。

きっと僕もそうなのだ。何か大切なことが目には見えないけれどあることは知っている。けれど、それが何なのか知らない。それは、絆を結んだものにしかわからないことなのだ。絆を結んだものだけが、小麦畑を輝かせ、暗闇に浮かぶ星々を笑わせたり泣かせたりできる。

星の王子さま』を読んでいて、僕が泣いてしまうのは、そういう絆を欲しているからかもしれない。誰かの幸せや不幸、それ自体が僕にとってのそれであるような絆だ。誰かが幸せであることが、僕の世界を輝かせたり、誰かが不幸であることが、僕の世界をどんよりと染め上げるような。そういう絆を欲しているからなのかもしれない。

 

あなたと絆を結ぶために
私はここにじっとしています。

 

追記:王子さまはただ自分の物語を生きているが、サン=テグジュペリは僕にそういう何かがあることを教えてくれている。