わたくしごと註解

17-18世紀の西洋哲学および生命思想史を研究しています。執筆者については「このブログについて」をご覧ください。

キリンの首はなぜ長いか

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 ニュースを見ていたらキリンの首がなぜ長いのかについての記事があった。キリンの首はなぜ長いのかと聞かれたらどう答えるだろうか。「葉っぱを食べるために首を頑張って伸ばした」「高いところの葉っぱを食べることができるキリンたちだけが自然淘汰の結果残った」という説明が一般的になされる。

 ざっくりと言えば、前者はラマルク主義による説明、後者はダーヴィン主義による説明ということになるだろう。しかし、現代のキリン研究者はそのような説に異を唱える。何が不満なのだろうか。問題は、《進化の仕方》ではなく、《進化の理由》の方にある。

 つまり、キリンは「高いところにある葉っぱを食べる」ということに関係付けられた理由によって首が長いのではないのだ。そのためにはキリンの首は長すぎるし、冬場はキリンは首を曲げて地面の草を食べるのである。キリンの首が長いのは、性的な意味に関係付けられるべきだと最近のキリン研究者たちは考えているらしい。

 キリンは長い首によってオス同士戦う。勝った方がメスに近づく権利を得るのである。そのとき首は長ければ長いほど強いのである。長い首を振り回してぶつけるというのは、大変な衝撃であろう。そのようにして長い首のキリンが自然淘汰的に残ってきたのである。従来の説は、「葉を食べる」ということに引きづられすぎていて、そのような観点に目がいっていなかった。

 たしかに、キリンの首は長い。そしてそれは自然淘汰の結果なのである。しかし、何による自然淘汰の結果だったのかという点で新しい説は意味を持つ。もちろん、物事はそんなに単純ではなく一つの理由によってキリンの首が伸びたということはできないだろう。複数の要因が複雑に関係しあいながら今の体型になったことは間違いない。今回の記事では、思い込んでいた一つの原因が実は唯一のものではなかったということを、教えてくれている。